富士のCNF集積地化 -中小参入 実践的支援を!

2016年02月26日

富士のCNF集積地化 地元企業は慎重姿勢-中小参入 実践的支援を
(高橋和之/静岡新聞社・富士支局)
県と富士市は、植物繊維を微細化した新素材「セルロースナノファイバー」(CNF)を手掛ける企業の集積地化に向け、同市での取り組みを加速させている。しかし今のところ、CNF事業に経営資源を投入することに対し、地元企業の間では慎重姿勢が見られる。参入を促すにはCNFメーカーとの仲介や官民の共同開発といった具体的な支援が行政には必要だ。
 CNFはナノサイズにまで解きほぐした繊維状の物質。軽量だが高強度で、熱による変形が少ないという。自動車用部材や包装材などでの応用が見込まれ、一部では製品化されている。県と市は昨年6月に推進組織を立ち上げ、CNFの開発と製品化を手掛ける大手製紙会社の生産拠点が同市内にあることから、セミナーを繰り返すなどして集積地化に始動した。
 「まだこれから」と話すのは業界をけん引する立場にある市内の有力製紙業の経営者。同業者間でCNFが話題なることは多いという。だが、「費用や採算性、将来性、ニーズが見えてこないという結論にいつも至る」とまだ様子見が大勢という業界の雰囲気を代弁する。
 市内の老舗製紙業幹部は毎回、セミナーに参加している。ただ、「紙にどう応用できるのか、CNFの用途技術もまだ分からない」と手探りといった姿勢。CNFの購入費が1キロ当たり1万円前後というコスト面での不安もありそうだ。
 それでも地元企業の関心度は高い。セミナーを企画する県富士工業技術支援センターの神谷真好センター長は「(セミナーの)参加企業や人数を限定している」。毎回、出席希望が多く、断らざるを得ないほどという。
 CNFは有望視されている素材で、新たな商機につながる可能性を持っている。将来は1兆円規模の市場に成長するとの予測もある。とはいえ、人材や技術、資本など経営力に限界がある中小企業にとって、参入のリスクは小さくない。富士市幹部も「資本と技術、設備の全てが整っているのは大手のみ。中小企業が単独で取り組むのは厳しい」と認める。大手製造業との共同開発や行政との連携は不可欠だろう。
 同センターは29日から、企業担当者を対象にCNFの実習を初めて開き、応用技術を指導する。こうした実践的な試みを重ね、地元企業のニーズに応えていく必要がある。
 (富士支局・高橋和之)

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