ものづくり 次世代へ~豊田佐吉 生誕150年(上)

2016年02月09日

ものづくり 次世代へ~豊田佐吉 生誕150年(上)=自動織機発明-湖西製造業の礎に
静岡新聞(2月4日朝刊 遠州版)

自動織機の発明などで日本の産業近代化に貢献した湖西市出身の豊田佐吉(1867~1930年)の偉業をたたえ、同市は15日から生誕150年の2017年2月まで1年間に及ぶ記念事業を展開する。製造業が基幹を担う同市で、佐吉のものづくり精神を未来にどう継承するのか、現状と課題を取材した。
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 畳1枚ほどの大きさの、重厚な黒い機械。織り上がった白い生地が、前面のローラーで巻き取られている。「1924年に佐吉が発明したG型自動織機です。完全に自動化され、1人数十台も運転可能になりました」
 1月24日、湖西市が開催した佐吉ゆかりの地を巡るウオーキング。同市山口の豊田佐吉記念館での説明に、参加者7人が興味深そうにうなずいた。市が150年記念事業に向け市民の意見を聞こうと企画したイベントだ。
 佐吉はこの地で大工の長男に生まれた。母が夜中まで機織りで苦労する姿に「もっと楽に布を織れる機械を発明しよう」と独学。23歳で従来より4、5割速く織れる木製人力織機を生み出した。
 それでも満足せず改良を続け、34年後には究極の目標だった自動織機を開発。特許権を英企業に譲渡した資金で、長男喜一郎がトヨタ自動車を創業した。
 「湖西が『ものづくりの街』に発展したのは佐吉翁がいたからこそ」と市担当者は敬意を込める。戦前から繊維業が栄え、戦後は自動車部品メーカーが多く進出。2013年の製造品出荷額は県内4位の約1兆6700万円、1事業所当たりでは県内1位の規模だ。
 それでも人口約6万人の湖西市の全国的な知名度はまだ低い。湖西市商工会は昨秋、名古屋市での産業展示会で、「佐吉翁に注目してもらいつつ湖西の技術力もPRできれば」と、市内企業の展示に並べて佐吉の紹介パネルも設置した。
 「製造業が厳しい時代だからこそ、佐吉の創意工夫に学ぶべき」と市内の企業経営者。困難を乗り越える象徴的存在として、市民に勇気を与えている。