輸出の復活で人口社会減に歯止めを

2015年02月10日


一般財団法静岡経済研究所

シニアエコノミスト 中嶋壽志


平成26年の人口の社会増減が発表され、静岡県は2年続けて北海道に次ぎワースト2になった。しかも、社会減数が前年に比べさらに増加し、マイナス7,240人と7,000人台を超えた。人口の社会増減は、地域間競争の結果の表れでもあるから、静岡県は地域間競争で後れを取るようになってきていると考えられる。

静岡県は、全国でも有数のモノづくり県であり、特に自動車や電気機械などの輸出依存型の加工組立産業に牽引され経済発展してきた。しかし、今その両産業が大きく変わろうとしている。電気産業は、テレビや携帯電話に象徴されるように新興国の追い上げにより国際競争力の低下が顕著である。自動車産業を見ると、まだ日本車の国際競争力は強いものの、急速な海外現地生産化の進展により、輸出の減少が顕著になっている。この結果、両産業の国内生産の減少が起こり、その影響の直撃を受けているのが静岡県であるともいえる。まさに、こうした構造変化を映しだしているのが、人口の社会増減の動向でもある。

ただ、人口の社会減をくい止めることは容易なことではない。平成26年に社会増減がプラスとなった都道府県は、東京、神奈川、埼玉、千葉の大東京圏と宮城、愛知、福岡のわずか7都県しかないことがそれを物語っている。しかも、静岡県は人口吸収力が高い大東京圏と愛知県に隣接しているから尚更である。

静岡県が人口の社会減をくい止めるためには、モノづくり県として製造業の再興が不可欠であり、そのためには「輸出」が重要なキーワードとなる。かつて外需依存の経済成長により、貿易摩擦も経験し、外需依存から内需依存型経済への移行が叫ばりたりした。しかし、我が国の外需依存はドイツや韓国などと比べるとはるかに低く、決して高くはない。改めて、輸出にスポットライトを当て、輸出ができる企業、産業分野の育成が重要となるのではないだろうか。