ものづくり 次世代へ~豊田佐吉 生誕150年(下)

2016年02月09日

ものづくり 次世代へ~豊田佐吉 生誕150年(下) 
人材育成の拠点構想-施設に財政面課題(瀬畠義孝/湖西支局)
(静岡新聞 2月6日朝刊 遠州版)
 トヨタグループが運営する豊田佐吉記念館(湖西市山口)を核に、ものづくりの「体験」「交流」「発信」ができる拠点を設けてはどうか-。
 昨年10月、湖西市から委嘱を受けた市民らの企画委員会は、生誕150年記念事業に向けた提言書を三上元市長に手渡した。
 タイトルは「『佐吉道場』構想」。基本理念は「モノづくりはひとづくり」。佐吉の精神を継承し、国内外の発展に貢献できる人材を育てるために13の取り組みをまとめた。「産学官民が連携する仕組みを作り、この構想を進めてほしい」。佐原伸彦委員長は期待を込めて説明した。
 だが、湖西市には新たに大規模な施設を整備する財政的な余裕は乏しい。耐震性不足が判明した市民会館大ホールも2013年7月から使用中止のまま、建て替えや改修の方針を決めかねている状況だ。「時間やお金がかかるもの(提案)もあるが、可能な限り実現したい」。三上市長は慎重に言葉を選んだ。
 一方、15日から1年間の記念事業で市が予定する事業は18ある。佐吉翁ゆかりの地への案内板設置と散策マップ作製、絵本「豊田佐吉ものがたり」の英訳本発売、トヨタ産業技術記念館(名古屋市)バス見学会など。比較的費用のかからないソフト系の事業が多い。
 「市の合併から6年弱たつが、旧新居町の人々にとって佐吉翁はこれまで『隣町の偉人』だった」と三上市長。まずは広く市民全体に佐吉の人物像や偉業を知ってもらうことに重点を置いている。
 企画委員の一人は「150年記念事業を単なるイベントで終わらせては意味がない」と話す。17年2月の生誕150年までに市民自身が市の将来を見据えて考えるべきだろう。