天野さんインタビューで我思う

2015年02月20日


静岡新聞社・静岡放送  シニアプロデューサー  澤木久雄

 今年の正月、ノーベル物理学賞を受賞した天野浩さんにお会いした。短時間のインタビューの中で、浜松フォトニクスなど故郷の光関連事業への氏の強い関心ぶりが伝わってきた。天野さんはこの分野の企業が集積することの大切さを訴えると共に、ひとつの産業を興すことの難しさも指摘された。多分その通りだろうと思う。
 一朝一夕に新産業が生まれるなど不可能である。関係企業や研究者の不断且つ継続的な探究心こそが大切である、とここまで書いて、我ながら表現の陳腐さにお前も同じだなと笑ってしまった。というのも最近、メディアに登場する人たちのことばに口答えしたくなることが多いからだ。
 例えば「夢を持つことの大切さを多くのこどもたちに知ってもらいたい。」「諦めないで努力を続けていれば必ず良いことがあります。」といった発言。天邪鬼な私にはあまりに無自覚な夢キャンペーンとしか映らない。
 そして「静岡県ほど豊かで恵まれた県はありません。皆さんもっと自信を持ちましょう。」「静岡県には多くの世界的企業が存在します。その進取の精神を見倣いましょう。」「浜松は出世人を多く輩出した出世のまちです。」「天野さんは光産業のまち浜松として大いに称えたいです。」・・・・何か違うんだよなあ。
 同じ文脈でいうなら冒頭の「不断の探究心こそが大切である。」も紋切型で恥ずかしいほどつまらない。そう、他人事で血肉となる愛情が感じられないのである。
 このPTは県内の中小零細ものづくり企業を応援するものだが、目的は単に企業に技術開発を促すことではないし、ましてサイト登録社数を増やすことでもない。最大の願いはこれからのものづくりとは何なのかを問うことで、企業同士が互いを尊重しつつ切磋してイノベーションを起こし、その先の豊かな暮らしの実現に貢献して欲しいということだ。
 この言い方、まだ愛が足りないですか?